殺人鬼と結婚するマンガ『夏目アラタの結婚』が面白い

最新5巻、ビッグコミックスで連載中(2021年6月時点)

連続バラバラ殺人犯の被害者である息子から「お父さんの頭が見つかっていないから、容疑者から情報を聞き出して欲しい」と依頼されて、仕方なく容疑者として逮捕されている女性 品川真珠 と面会し、頭の場所を聞き出そうとした児童相談所に勤務する元ヤン 夏目アラタ だったが、情報を聞き出すために品川真珠にプロポーズをしてしまい…。

タイトルやあらすじだけだと面白くなさそうなんですが、友達から勧められて観てみるとメチャクチャ面白くてビックリしました。それもそのはず、著者はテレビドラマにもなった名作医療マンガ『医龍』をはじめ『第3のギデオン』や『幽麗塔』を生み出した 乃木坂太郎 氏の作品ですから、そりゃ面白いハズです。

見どころ

本作は主人公の夏目アラタが殺人鬼でありヒロインである 品川真珠 と刑務所での面会を通してストーリーが展開していきます。その中での見所は2つ、1つはお互いを知るにつれて惹かれ合っていく歪な人間模様を描いたヒューマンドラマ要素。もう1つは 品川真珠 が隠している事件の真相に迫っていくミステリー要素です。

キャラクター

ヒロインの 品川真珠頭が良くて、人の心を掴む能力に長けているのですが、それに比例してブッとんだ性格をしている絵に描いたようなガチサイコパス野郎です。幼少期に劣悪な家庭環境で育った闇深い過去を持ち、歯並びが悪く、心を閉ざしています。

対して主人公の 夏目アラタ は、子供の幸せのために全力を尽くす心優しい男ですが、過去に暴力を振るわれている子供を助けるために、その親を殺しかけたようなアツすぎる面もあります。

2巻から引用

レビュー

「殺人犯から情報を聞き出すために結婚する」という、マンガならではの非常識で不安定な設定を土台に、大胆だけどハズしすぎないストーリー進行と、強烈で個性的なキャラクターが凄い絶妙なバランスで成り立っているなと感じました。

物語の冒頭の見せ方から上手く、婚約届を手にした夏目アラタが殺人犯と面会する場面で興味を引かせるシーンから始まり、直後に場面を主人公の職場へ切り替えて夏目アラタの人柄を仕事態度で表現してキャラ説明をするという、ベテランを感じさせるスムーズな物語の導入となっています。

途中に何度か「いやいや、それはアカンやろ」と突っ込みたくなる無茶な設定もありますが、コメディ系マンガの表現に近い作風になっているためか、無茶な設定も笑って突っ込める程度でストレスには感じません。多分、これがバカ真面目でクソシリアスな作風だったら萎えていたと思います。

品川真珠は連続殺人犯の容疑で死刑になる可能性が高く、無罪になる可能性はほぼゼロ。そんな中、私たちは彼女の壮絶な過去を知っていったり、時折見せる素の表情や行動を見ていくうちに、サイコパスヒロインへの情が湧いてきます。

「え?ホンマはええやつちゃうん?」「あれ?なんか可愛く見える」「実はこの子は毒親の被害者なんや!」そう思い始めたら品川真珠の思惑通りです。

テンポよくトントン拍子で話が進んでいくのでサクサク読めます。まだ5巻で絶賛連載中ですが、ミステリー系のマンガでは歴代でもトップクラスの名作になるポテンシャルを秘めた作品です。ぜひマンガ好きの方は抑えておいてください。

Amazonレビュー:⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️(85%)

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