【マンガ大賞とは】
マンガ大賞実行委員会が指揮をとり、前年(今年だと2020年)の1月1日から12月31日に出版された単行本の内、最大巻数が8巻までの作品を対象に、集まったマンガ好きの有志や書店員たちが選考員となって “今アツい漫画” を選ぶ祭典。【選考方法】
「人に薦めたい作品を5作品」を一次選考で選出し、得票数10位までの作品が二次選考にノミネートされる。二次選考では選考員がその中からトップ3を選び、その結果を集計してランキング化。1位になった作品が『マンガ大賞』となる。
マンガ好きライターのマニです。先日、第14回目となる<マンガ大賞2021>が発表されました。毎年1位になる漫画はハズレがなく、メチャクチャ面白い作品なので、今年はどの作品が選ばれるのだろうと期待していたで人も多いのではないでしょうか。
今回はそんなマンガ大賞で発表されたトップ1位から10位までの作品を全て読んだのでレビューしていきたいと思います。
⚠️率直な感想を述べているので、かなり辛口な表現が出てきますが、あくまで個人の感想なので予めご了承ください。
大賞(91ポイント)
葬送のフリーレン
総評:メチャメチャおもしろい
魔王が討伐された数十年後のファンタジー世界を舞台した作品です。主人公となるのは勇者ではなく、パーティーメンバーだった女性エルフの魔法使い「フリーレン」で、彼女が旅をする中で体験する様々な日常を描いた心温まる物語となっています。
タイトルで使われている「葬送(そうそう)」という言葉はWikipediaによると、『死者と最後の別れをして、火葬場などの埋葬する場所に送り出すこと、またそのための儀式』と説明されていますが、そのタイトル通り、この作品では「別れ」や「死」について考えさせられる場面が多く登場します。
超長寿のエルフと、そのエルフに比べて短命な人間達の価値観を対比させた展開には、人間の儚さや偉大さについてハッと再認識させられます。そして何よりユルくてだらしないフリーレンがメチャクチャにかわいいです。
胸躍る壮大な物語ではなく、とても身近な出来事に視点を置いていて、心にジワジワと染み込むようなほっこりした感動が味わえます。
ちなみに作品とは直接関係はないのですが、以前誰かから「犬や猫から見たら人間はエルフみたいな存在じゃないか」って言われて、その時なんか妙に納得したんですけど、フリーレンを見てるとナゼかそれを思い出して、うちで飼ってる犬と遊びたくなりました。きっとフリーレンも人間に対してこんな気持ちになったのでしょう。しりませんけど。
2位(67ポイント)
チ。〜地球の運動について〜
総評:メチャメチャおもしろい
知る人ぞ知る名作『ひゃくえむ。』の著者 魚豊(うおと) の作品です。
15世紀のヨーロッパを舞台に、何代にも渡って地動説を立証していく、というストーリーとなっています。しかし、この時代では地球のまわりを星々がグルグルと回るのだという天動説が当たり前とされていて、それ以外の説を唱えると異端思想者と見なされて火あぶりにされます。
そんな強烈な時代の中、宇宙の果てしない美しさの一端を知ろうと、命を賭け、拷問の危機に身をさらしながらも、知的好奇心だけで突っ走っていくアツい人間達の姿には声援を贈らずにはいられません。
登場するキャラクターはホッカホカのむさい野郎共ばかりです。萌えきゅん満開あたふた幼女も、やけに胸の谷間が見える服を着た清楚系巨乳も、痩せ型もち肌のつよつよイケメン貴族も登場しません。ただただ内容と見せ方がメチャクチャウマイんです。
「なんや地動説の話かいな。」と舐めていた自分を叱ってやりたい。やっぱり魚豊先生の作品は一味違います。
3位(64ポイント)
カラオケ行こ!
総評:まぁ、ふつう
ヤクザが高校生に歌のレッスンを受けるコメディ漫画です。ちょいちょい感動を挟んではいますが、感動部分は内容が薄く、ギャグもクスッとくる程度。正直この作品が3位なのは謎です。面白かったけど誰かに勧めるほどではなかったかな。1巻完結なのでサクッと読めるのは良いと思いました。
4位(60ポイント)
水は海に向かって流れる
総評:ちょっとおもろい
独特な人間模様を描いた恋愛&ヒューマンドラマ。『子供はわかってあげない』で注目を集めるモーニング超期待の新星 田島列島 の作品。
主人公は高校への進学を機に叔父の家に居候することになったけど、そこはシェアハウスで、主人公の父が不倫をしていた時の相手女性の娘(現在OL)が同じシェアハウスに住んでいた。という、ややこしい関係から始まる、家族の物語です。
めちゃくちゃ優しい男子高校生と、どこか素っ気ないOLを中心に展開していく本作は3巻で終結。amazonのレビューでは「棺桶に一緒に入れて欲しいマンガ」とか「日本漫画史に燦然と輝く傑作漫画」とか、とにかく絶賛の声が凄まじい。
けど個人的にはそこまで絶賛はできません。確かに良く出来ていてキレイに締め括られてはいるのですが、ラスト付近の展開がちょっと納得できなくて、ガツンと心に響くものでもなかったです。
5位(59ポイント)
推しの子
総評:全くおもしろくない、子供向け
『かぐや様は告らせたい』の 赤坂アカ と、『クズの本懐』の 横槍メンゴ がタッグを組み、新しい切り口で芸能界を描いた作品。
ミステリー要素とコメディ要素が丁度良い塩梅で仕上げられた本作は、ひょんなことから推しのアイドルの子供に生まれ変わって、なんか事件に巻き込まれて、その犯人を探すために自分もアイドルとして活動する、という物語です。
無茶苦茶な設定と強引な展開は良くも悪くも少年誌レベル。知的でもないし、タメにもならず、心にも響かず、笑えもしないのでまったく面白みを感じませんでした。
方向性は違うけど、俺ツエー系なんかの無双系マンガと本質は同じだと思います。凄い主人公の設定だけど、結局はご都合主義な展開で進み内容は薄い。頭を空っぽにして読めば気持ちよくなれる漫画ではあります。
6位(58ポイント)
怪獣8号
総評:おもしろくない。安心して読める少年誌系バトル漫画
ひょんなことからメチャクチャ強い怪獣に変身できるようになった最弱主人公は、変身能力を隠しながら、人間を襲う怪獣を退治する特殊部隊で活動する、という物語。
「特殊部隊」「未知のモンスター」「普段弱いけど実は強い主人公」「ツンデレヒロイン」「物理学を無視した派手なバトル」など、少年バトル漫画でウケそうな要素が随所に盛り込まれた作品です。
絶体絶命と見せかけて結局は何とかなる安心の展開は良くも悪くも少年誌系バトル漫画。連載開始時からジャンプ+でずっと購読しているけど、『ワールドトリガー』や『ハンター×ハンター』のように複雑で緻密な戦略と戦術を用いて戦うだとか、先の読めないスリリングな展開を見せるワケでも無い。リアリティがなく、ただカッコいい奴らがカッコよく振る舞っているだけに感じて面白みを見出せません。
7位(57ポイント)
女の園の星
総評:ちょっとおもろい
女子高で働くの男性教職員の日常を描いたコメディ漫画。女子高生の言動がリアルなので、女子高生特有のテンションとかセンスが好きな人にオススメしたい。爆笑はないけどクセになる感じ。
8位(48ポイント)
メタモルフォーゼの縁側
総評:結構おもしろい
BL漫画の沼にハマったお婆ちゃんと、BL好きの冴えない女子高生の日常を描いた物語。5巻で完結です。
淡々と日常を描いているだけですが、セリフの無いなにげない1コマに沢山の感情や情景が詰め込まれていて、漫画における純文学的な作品となっています。なので大衆文学系の作品(エンタメ作品)しか受け付けない人が読むと「物足りない」と感じること必至です。
優しさと少しの寂しさ、勇気や活力に溢れた作品で、読んだ後に登場人物の気持ちを考えてみたり、その後の未来を想像してみたりと、純文学系作品の醍醐味である「余韻」にどっぷりと浸ることができます。
ちなみに本作は実写映画化が決定しているそうです。ただ純文学的な漫画やアニメが実写化される場合、売れるためにエンタメ作品に変えてしまって、結果的に作品を台無しにする風潮があるので映画化は不安でしかないし、この丁寧な作品を2時間という枠に収められるのか心配でしかないです。
9位(46ポイント)
九龍ジェネリックロマンス
総評:今のところおもしろくないけど先が楽しみ
香港にあった荒廃したビル群の九龍城砦をモチーフにした街「クーロン」に住んでいる男女のラブロマンス&ミステリー。『恋は雨上がりのように』の 眉月じゅん 著。
街は九龍城砦まんまで描かれてるけど、超平和的な描写ばかりでとてもスラムとは思えないこの世界では、科学レベルが尋常じゃ無いくらいの発展を遂げていて、地球を人工的に作ろうとしています。
そんなスラム街を舞台に進むストーリーは、謎に謎を積み重ねていくスタイルで、現在4巻が最新ですが、今のところ謎だらけで考察する楽しみしかありません。
「えっマジで!?」と驚愕の事実とか発覚したりはするものの、驚愕するだけでストーリー自体は面白さを感じません。その原因は私が恋愛作品に面白みを見いだしていないことなので、恋愛ものが好きな人には刺さるかもしれません。とは言え、これからどうなるのか楽しみに待っている作品の1つです。
10位(38ポイント)
SPY×FAMILY
総評:子供かわいい
コメディ漫画。敵国を探るスパイと敵国の殺し屋がひょんなことから偽装結婚して、超能力を持った女の子を養子にするけど、なかなか普通の日常が送れずトラブルにまみれる偽装家族の奮闘記。
ただただ登場する子供達が可愛い漫画。クスッとも笑えないコメディ作品だけど、子供がかわいすぎてなんか見てしまう。そんな作品です。なんで世間でこんなに話題になっているのかは謎。