ハイパーポップとは
Hyperpop(ハイパーポップ)とは、ポップミュージックに様々なジャンルのサウンドデザインを組み込み、ポップ要素を過剰的に誇張した表現が特徴の音楽ジャンルです。
音楽技術や音楽手法に根ざした形式的なジャンルではありません。エモラップ、ブロステップ、ロック、フューチャーベース、トランス、ニューメタル、チップチューンなど、様々な音楽のスタイルとポップ音楽を結びつけ、ある種の共通精神を持って制作された、とても線引きの難しいジャンルとなっています。
2019年8月にSpotifyが「ハイパーポップ」という用語を使用し、100 Gecs、Phixel、Charli XCX、Dorian Electraなどのアーティストをフィーチャーしたプレイリストを公開したことで注目され、2020年1月にソーシャルメディアアプリTiktokを通じて急速に広まりました。
ウォール・ストリート・ジャーナルのロック音楽とポップ音楽の評論を得意とするライター Mark Richardson(マーク・リチャードソン)は、ハイパーポップをポップ音楽の人工的な比喩を含め、「キャッチーな曲と記憶に残るフックを取り入れた漫画的なノイズの壁」と表現しています。
ハイパーポップの起源と歴史
UKで異端の電子ポップレーベル<PC Music>
ハイパーポップの確かな起源は不明ですが、LGBT(Q+)のオンラインコミュニティを中心に活性化され、SOPHIE、Quay Dash、Dorian Electra、Kim Petras、Ayesha Erotica、100 Gecs、Brooke Candy、ThatKidなど、このジャンルの初期に活躍した多くの重要人物がトランスジェンダーであることが確認されています。
ジャンルの発生元レーベルとして有力視されているのは、2013年8月にイギリスの音楽プロデューサー/シンガーソングライターの A.G. Cook(A.G.クック)によって設立されたレーベル<PC Music>で、ハイパーポップを制作しているアーティストの多くは<PC Music>に関係しているか、<PC Music>の影響を受けていると言われています。
<PC Music>所属アーティストは、2019年のグラミーにもノミネートされたトランスジェンダーのアーティスト 故 SOPHIE(ソフィー) を筆頭にSpinee、Danny L Harle、そしてA.G.CookとSOPHIEが企画した半架空キャラクターQTらがおり、ハイパーポップの誕生に影響してきました。
彼らはJ-POPからの影響を大きく受けており、それはA.G. Cookが宇多田ヒカル「One Last Kiss」の共同プロデューサーとして話題を呼んだことや、SOPHIEが 安室奈美恵 や きゃりーぱみゅぱみゅ ら日本人アーティストとコラボレーションしていることからも伺えます。
Nightcore や Kawaii Future Bass からの影響
また、さらに遡って行くと、音楽SNSの Sound Cloud(サウンド・クラウド) に存在する Nightcore(ナイトコア)シーン や、フューチャーベース以降に誕生した Kawaii Future Bass もハイパーポップシーンのルーツにあることが見て取れます。
Nightcoreとは、2002年にノルウェーのDJチーム『Nightcore』が、学校の課題で楽曲の原曲BPM(テンポ)やピッチを上げたことに始まったリミックス手法の一つ。 Kawaii Future Bass は、主に日本を中心に盛り上がりを見せた音楽ジャンルです。Sound Cloudで「Nightcore」や「Kawaii Future Bass」で検索すると分かるように、どれも日本のアニメや漫画を想起させるサムネイル画像となっています。
Nightcore
Kawaii Future Bass
あとがき
ハイパーポップは、STARKIDSのSpace Boyがニート東京で「オレらは色々作っている。なんでも作る」と語っていたように、国境やジャンルに捉われない、自由な発想を持った次世代アーティストらが創造した1つの副産物にすぎず、それをメディアが勝手に『ハイパーポップ』と名付けただけです。
これはかつての「インテリジェント・ドラムンベース」や「IDM」、「エモラップ」などと同じく、外野が勝手にシーンを作って盛り上がっている状態で、ハイパーポップの文化というのは実は存在しないのかもしれません。
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