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トラップとは
Trap(トラップ)とは、アメリカ南部で発生したヒップホップのサブ・ジャンルであり、おなじく南部ヒップホップのサブジャンルである「ダーティ・サウス(サザン・ラップ)」や「クランク」の影響を受けている。
語源は麻薬取引や使用する場を指す「Trap(トラップ)」というスラングが名前の由来となっており、Roland社のドラムマシン「TR-808」で制作された「ズゥーーーン」と響く重厚なサブベースと、細かく刻まれたハイハット、薬物の取引などを主題にした歌詞が特徴的だが、トラップの明確な定義はない。
現在のトラップは、ハードトラップ、チルトラップ、トラップステップ、トラップハウス、トラップEDM など、数多くのサブジャンルが存在しているが、その多くはEDMやベースミュージックと融合したものだ。
BPMは90前後、または150前後(または75)が多く、90前後のBPMはヒップホップ系、150前後のBPMはダンスミュージック由来のものに多い傾向がある。ダブステップやフューチャーベース、ハードスタイルとの相性が良く、1曲の中にこれらのジャンルを織り交ぜたハイブリッド・サウンドも多数存在する。
つまり現在のトラップは、ヒップホップ系と、ダンスミュージック系の2つの流れがある。
1992年
トラップの始まり
1990年代初頭にCool Breeze、Dungeon Family、Outkast、Goodie Mob、Ghetto Mafia といったアメリカ南部にあるアトランタのラッパー達が特定のラップに対してトラップと言い出したのが始まりとされおり、現在でもトラップ・ラッパーのほとんどが南部出身だ。
この頃のトラップは薬物についてリリックしたものだけを指していた傾向があり、テキサス出身のUGKが1992年にリリースしたデビューEPに収録された「Cocaine In The Back Of The Ride」などがそれにあたる。
ちなみにUGKはアトランタ、テキサス、ニューオリンズ、ヒューストン、メンフィス、マイアミなどのアメリカ南部のヒップホップ・ジャンルである「サザン・ラップ」の先駆者でもある。
トラップの源流となったアメリカ南部のヒップホップ
●クランク
●サザン・ラップ
2000年代初頭〜2010年
ヒップホップ・ジャンルとしての確立
1990年代のトラップには、現在のトラップ・サウンドの特徴である重く長いサブベースや細かいハイハットなど、サウンドとしての特徴は見られない。
トラップが現在のあのサウンドに成り、ジャンルとして認知され始めた時期は2000年から半ばにかけて。
T.I.、Lil Wayne、Gucci Mane、Young Jeezy、Yo Gotti、Rick Rossら南部のラッパー達がヒットし、ラジオ局が放送するしたことでトラップは爆発的に広まり、ジャンルとして定着したとされている。
そして現在のトラップ・サウンドを確率させてきたのは、Mannie Fresh、DJ Toomp、Fatboi、Tony Fadd、Drumma Boy、Zaytoven、Shawty Redd、D. Rich などの名プロデューサー達だ。彼らがいなければトラップはまた違った形になっていたかも知れない。
トラップをトラップたらしめた作品としてはT.I.が2003年にリリースしたセカンドアルバム「Trap Muzik」や、Gucci Maneが2005年にリリースしたアルバム「Trap House」が挙げられる。
Gucci ManeはのちにInstagramで「オレがトラップを発明した」と発言しているが、T.I.は「いや違う、オレが発明した。オレのアルバムの方がリリースしたの早いし」と反論し、論争が勃発している。どちらが真実か定かではないが、この両者の曲がトラップ確立の1つの要素となったのは間違いないだろう。
トラップ人気の勢いは止まらず、2010年後半にもなると彼ら南部のトラップ・ラッパー達はヒップホップのメインストリームに踊りでることとなり、ヒップホップ外のアーティストやプロデューサーらの注目を集めることになる。
音楽ジャンルとして確立された時代のトラップ
●T.I. – Trap Muzik (2003年)
●young jeezy – let’s get it thug motivation 101 (2005年)
2011年〜2013年
ベースミュージックやEDMとの融合
2012年あたりから、ベースミュージックやEDMのプロデューサー達がトラップを独自に取り込み、より強烈なサウンドへと進化させはじめた。
つまり、今までラッパーありきのトラップだったが、ラッパー不在でも成り立つサウンドとしてのトラップが確立されたのである。
この波に一早く乗ったのがDiploを筆頭とするベースミュージック勢だ。
2011年にDiploのユニットであるMajor Lazerからリリースされたシングル「Original Don」では序盤にトラップの要素を取り入れており、リミックスではドラムンベースとのハイブリッド・トラックを収録している。
2012年にはDiplo主宰レーベル「Mad Decent」からBaauerが「Harlem Shake」を、SkrillexのOWSLAに所属するDJ Sliinkはトラップとハウス要素を混ぜた「Whine for me」を、Sklirexはレゲエにダブステップとトラップの要素を混ぜた「Make It Bun Dem」をリリース。
2013年にはEDM界の大物DJ Snakeが、Lil Jonとコラボして狂気的なトラップをリリース。様々な大物アーティスト達によってトラップはフェス層へ爆発的に広まる。
ヒップホップ・シーンだけでなく、ダンスミュージック・シーンのメインストリームへも浸透したトラップは、世界最大級のフェス「Tomorrowland」でトラップ専用ステージが設けられるほどに人気となった。
●Baauer – Harlem Shake
●Dj Sliink – Whine For Me
●Skrillex – Make It Bun Dem
●DJ Snake, Lil Jon – Turn Down for What
2014年〜現在
次世代アーティストらの登場
フェスでは激しいハード・トラップや、エモいチル・トラップが圧巻し、2014年あたりにはAlison Wonderland、Illenium、Slumberjack、TroyBoiなど、ダンスミュージック系トラップの次世代アーティストらが続々と台頭した。
日本のトラップも盛り上がりを見せ始めたのはこのあたり。ヒップホップ系ではKOHHやSALU、AKLO
らがシーンを牽引。日本のFuture Bass系のアーティストらもトラップを取り入れはじめ、日本人トラックメイカーUjicoがKawaii Future Bassと共にKawaii Trapを提唱し話題を呼んだ。
本場南部のラッパーらの勢いも止まらず、2016年にはマイアミ出身のラッパーLil Pumpが登場。SoundCloudで公開したドープなトラップは数千万回再生され、2017年に「Gucci Gang」をリリースし特大ヒットとなった。
以上が現在までのトラップの歴史である。
現在ではすっかり世の中に定着し、様々なアーティストがヒット・トラックを連発しているトラップ・シーン。誕生して間もないこのジャンルは、これからどう発展していくのだろうか。
●Alison Wonderland – I Want U
●Illenium – Make Me Do
トラップを生んだ南部の歴史的背景
アメリカ南部の地域的な特徴としては、1861年から1865年にかけて、当時の奴隷制度廃止を反対するアメリカの11州が「南部連合国」を立国しようとして勃発した内戦「南北戦争」の影響が色濃く残っています。
南部連合国に加盟した11州は、サウスカロライナ、ミシシッピ、フロリダ、アラバマ、ジョージア、ルイジアナ、テキサス、バージニア、ノースカロライナ、アーカンソー、テネシーといった、現在「南部」と呼ばれる地区です。
なぜ、この11州が奴隷廃止に反対したかというと奴隷の安い労働力に頼っていたから。これら11州は、奴隷制度が廃止すると経済力が無くなり、破綻する恐れがあったのです。
戦争の結果、南部は戦争に負けて奴隷制は廃止されます。そして南部が懸念していた通り、南部全土の経済力は急落し、とても貧しくなった上に人種差別が他の地区より根強く残り、閉鎖的になりました。
貧困地区となった南部はドラッグ、特に低所得者が手を出しやすい「クラック」が蔓延。閉鎖的なので同時に新しい文化も築かれていったというワケですね。なるほど。
こうしてできあがった文化がドラッグをリリックするトラップ・ミュージックに繋がっているということでしょうか。確かに初期のトラップではクラックについて歌っているトラックが多いです。
こうして全体の流れを見ると音楽のスタイルは全然違いますが、誕生の過程はブルースと似ている部分がありますね。
オススメのTrap MIX
ALISON WONDERLAND trap, hip hop and bass DJ set in The Lab LA
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